禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
しかし。
言葉を受けた張本人のアンだけが、顔色ひとつ変えること無くリヲに向かって深々と頭を下げた。
「申し訳ありません。私の考えが足りませんでした」
蜜色の髪をサラサラと項垂れさせ真っ直ぐ頭を下げたアンの姿に、部屋にいたリヲ以外の誰もが驚く。
「副長殿にもご迷惑をお掛けしました」
アンはそう言って今度はミシュラに向き直って頭を下げた。
「えっ、いや、僕は全然!」
慌ててミシュラは手を振って否定し、下げたアンの面を上げさせようとした。
けれどアンはその手をすり抜けるように歩き出し、扉まで進むと振り返って
「御無礼をお許しください」
ともう一度深々と皆に向かって頭を下げ部屋から出ていった。