禁恋~純潔の聖女と騎士団長の歪な愛~
さっきまで獣の様な眼差しで自分を見ていた少女が、今度は幼子の様な笑みを自分に向けている。その事にミシュラは何とも言い様の無い不思議な気分に襲われた。
「…ミシュラ副長?」
「あ、ああ。ゴメン、なんでもない」
ミシュラはアンの勿忘草色に煌めく瞳に吸い込まれそうになっていた自分に気付き慌ててかぶりを振る。
なんだか動悸が逸るのは今の切迫した試合のせいだろうかと思いながら。
それにしても。惚けてる場合ではない、アンの力試しが終わったのだ。副長として彼女の力を評してやらねば。
そう気を取り直して口を開いた瞬間
「まるで猪だな」
リヲが低く呆れた声で先に口を挟んだ。
「…なっ!?イノシシ!?」
にこやかだったアンが目を剥いてすっとんきょうな声を上げる。
「バカの一つ覚えみたいに突進を繰返して、まるで猪だ」
「ひ…酷い!イノシシだなんて!!」
兄のあまりの言動に、信じられないと云った表情を目一杯浮かべながらアンはリヲを見上げた。いくら気の強い彼女でも猪呼ばわりはショックだったようだ。