センセイ
「それがわかんないんだよね。ミク、モテそうなのにもったいない。男嫌いになるなんて、昔なんかあったの?」


あたしの机の上で両腕を伸ばした由里は、上から下まで眺めてそう言う。



モテるモテないとか、そもそもそんな問題じゃない。



男がきらいで、先生もきらいだから男のセンセイである川瀬もきらい。



あたしの中でそれはぜんぶ『きらい』で完結していることなのに、ほかの人はあたしの男嫌いを知ると、なんでか根掘り葉掘り聞きたがる。



もう放っといてくれないかな。



2年になってからはじめておなじクラスになったばかりの由里に、理由なんて話せるわけがない。

そもそも、中学がおなじだった仲のいい友達にすら話したことがないんだから。


「ミクー?」


返事をしないあたしを、由里が下から覗き込んでくる。


話したくない、って全身で言ってるのになんで気づかないんだろう。


正直に話すつもりは全然ないから、あたしは適当に嘘をついてごまかそうと考えた。





その瞬間、次の授業の開始を知らせるチャイムが鳴った。




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