暗闇の鎌【読みきり短編集】
 たられば。

嫌いな心持ちの一つなのに、いやおうなしに繰り返す。


――ええい! 決心を決めなさい美知。

大丈夫、マスカラじゃない! 貴方じゃなく私が愛されているの!


鏡からみえた両目は重く、一重じゃ耐えられないような分厚いまつ毛。

そんな整えられたまつ毛に呟く。


――仕方がない。

マスカラを切らした今、二十三重奏のこのまつ毛は、希望であり未来。私の全てなのだから。


いつも通り、会社の外では彼が待っている。己の会社を早く切り上げた彼が待ち構えている。


私も早くしなくては。

なんせ、こんな私の為に自分の仕事を早く終わらせてくれているのだから。
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