廓にて〜ある出征兵士と女郎の一夜〜
昭和十九年 中国信陽〜漢口



遠藤 悟様


悟ちゃん、いまごろはフネの中でしょうか。ブタイの中ではみなさんとなかよくやっていますか。


悟ちゃんは母さんをうらんでいるでしょうね。


それでも母さんはグンコクの母として悟ちゃんに言います。


どうかしんぼうして戦地でがんばってください。天子さまのため、お国のため、そだててくれた父さんのため、おとうとやいもうとのためにじっとこらえてたたかってきてください。



ゴコク寺でおまもりをもらいました。それには悟ちゃんの へそのお が入っています。半分にしてのこりは母さんがたいせつにもっています。


どうか、どうかしんぼうしておつとめをはたしてください。


とおくのこきょうからいつもいのっています。


母より




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