私の学校生活って変わっていますか?

 ~人間界~






腕時計を見ると10時を指していました。




わたしー春風梨乃(はるかぜ りの)は何も無くなった部屋の隅で体育座りをしていました。ここはつい昨日まではわたしの部屋でした。ですが、今日からは空き部屋、いや、母と父の物置になるでしょう。




もうすでに、部屋の前には母のであろう絵の具セットや、スケッチブック、父のであろう推理物の小説が入っているダンボールがスタンバイしています。




何故わたしの部屋が空っぽになっているか、それは、つい一週間前になります。




この世界では入学式と卒業式の時に能力と魔力の検査があります。




中学に入学した時のわたしの検査結果は、能力も魔力も無く普通に入学しました。




しかし、中学を卒業するとき、つまり一週間前です。




突然校長先生に呼ばれ「検査で能力と魔力、二つとも出たから一週間以内に荷物まとめとけ☆」




確か、こんな風なこと言ってた気がします。



あの時、校長先生の軽い言葉にムカッときて、心の中で今すぐその頭に乗ってるだけの毛を剥ぎ取ってやるぞ。と、毒づいていたのは覚えています。



出て行くことは、別にどうでもいいんです。


ただ一番ショックだったのは、せっかく受かった高校を辞退しなければいけなかったことです。



あの高校に行くまでの勉強がとてつもなく大変だったんです。



そして、受かったんですよ!有名校の桜咲医療大学付属高等学校に!



本当に大変だったんですよ、桜咲高校はオール5なければ絶対入れない所なんです、


なのでわたしは、勉強や対人関係、医療関係を無我夢中に頑張りました。



まあ、対人関係は残念な結果で終わりましたが・・・。



・・・前置きが長くなりましたが。



そんな有名校の入学を取り消しにされたわたしは、部屋の隅で自分の運の悪さを呪って

いるのです。



何故、こんな時期に、、、。せめて、3年遅かったら良かったのです。あと・・・

3年・・・ううっ



わたしが、部屋の隅でメソメソとしてると、ドアのノック音が聞こえ、

振り返るとお母さんがわたしの荷物を持ちながら立っていました。お母さんと言っても

まだ30代です。



わたしはもうすぐ16になります、若すぎです。



そんな事を考えているとは知らないお母さんは、ニコニコしながら少し心配そうに

言ってきました。



「梨乃ちゃん、下にもうお向かいの人来てるわよ。大丈夫?」



「はい、体はこれ異常ないくらい元気ですよ!体は。」


(精神はズタボロですがね)



わたしもニコニコしながら半泣きで返事をします。



「そろそろ、迎えの方に行きましょう。」



ああ、足取りが重いです。




玄関を開け、車の前に行った瞬間、待ち構えていたかのように村中の人がわたしの周りに集まってきました・・・。少し怖かったので、数歩後ずさりしてしまいました。



おばあちゃんが巨大なダンボールをわたしに渡し頭を撫でながら少し寂しそうな顔で言いました。



「梨乃、これから身寄りがいない土地で一人で生きていくのは、とても大変だと思う。けれど、それに負けないで、どんなことがあっても梨乃は、梨乃らしく生きるの。だけど、もし自分を見失いそうになって、負けそうになったら、おばあちゃんに手紙で相談しなさい、いくらでも相談に乗るわよ。
梨乃が近くに居ないのは少し寂しいけれど、おばあちゃん、ここから梨乃を見守ってるからね。」



言い終わったおばあちゃんの顔はとても優しく微笑んでいました。



すると次々に集まった村の人たちが口々に言い出しました。



「りのちゃんは頭良いから大丈夫だぁ~」「りのちゃんは強い子よ!大丈夫!一人でもやっていけるわ!」「辛くなっら帰ってきても良いのよ!」「いや、それは無理じゃよ」



村の人達と、おばあちゃんの言葉を聴き、わたしは涙を流すのを堪えていました。



すると、不意にスカートを引っ張られ振り返ると村の小さな子供達がわたしのロングスカートの裾を引っ張っていました。



わたしは、子供達の目の高さになるようにしゃがむと「どうしたんですか?」と聞きました。



すると、子供達はわたしの方に差し出すように表紙に「おねえちゃんだいすき」と書かれ、以外に上手いわたしの似顔絵付の紙の束を手渡してきました。




「あのね、おねえちゃんが、この人間界から、居なくなっちゃうって聞いてね、みんなで頑張って作ったんだ。」



と、目に涙を溜めながら、必死に笑顔を作ってわたしの顔を見ながら言いました。



わたしは、思わず子供たちを抱きしめました。



そしてわたしは子供たちに優しく言いました。



「ありがとうございます。でも、こんな時は泣いて言いん出すよ?」



子供達はしゃくりながら言いました。



「だめだよ!!だって、笑顔で、送る、ってみんなで、決めたんだもん!!」



「そんな作った笑顔で送られても嬉しくないですよ。堂々と泣いて送ってくれた方がまだましですよ」



そう苦笑しながら言うと、少年から泣き声にも似た大声で言いました。



「だって、一度むこうに連れてかれたら、能力と魔力が無くならないかぎりこっちの世界に返って来れないんだろ!!しかも、二つ同時に無くなることなんて無いって、てゆうことは僕達はおねえちゃんに一生会えないって事じゃん!!うああああああん!!!」



「村長が旅立っていく人には笑顔で見送るんだって、言ってたから、だから、私達みんなで笑顔で見送るんだって、決めたんだ、でも、やっぱりむりだよぉぉ、うあああん!!」


それが、合図だったかのように他の子供達も泣き出しました。



不覚にもわたしもほろりと来てしまいましたが、本気で泣くまでは行きませんでした。



役人の人がわたしの肩を叩いてきたからです。



わたしは、子供達から手紙を受け取り、役人の人が開けて待っていた車に乗り込みました。



後ろからは、無数の小さな足音と、大声で「さよなら」と叫ぶ子供達の声が聞こえ、わたしはそれに小さく答えました。







「バイバイ、わたしの故郷」








もう二度と帰っては来れないでしょう。































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