私の学校生活って変わっていますか?



それから、運転手のワープの能力を使い(瞬間移動ではなくワープだそうです)瞬きするほどの速さでサントルワールドに着きました。初めて見る能力に少しドキドキしました。
わたしも、本当にこんな力があるのでしょうか?

車から降りると、そこにはどでかい白いケロベロスが彫ってある門がありました。
口をあんぐりと開けたまま硬直していると、誰かに話しかけられました。
振り返ると、あからさまに頭に乗ってるだけの桂を被った、スーツ姿のおじさんがいました。あまりにもあからさま過ぎて笑えませんでした。

「やあ、君が人間界から来た春風 梨乃ちゃんだね、待っていたよ」

「はぁ」

「私は、この学校の教頭をやっている阿部勘太郎(あべ かんたろう)だ、よろしく」

「あ、はい、こちらこそよろしくお願いします!」

わたしはあわててぺこりとお辞儀しました。少しだけ緊張していますが、教頭先生の頭の上にある異物が半分の緊張を吹っ飛ばしていました。
そうとは知らない教頭先生はにこやかにわたしに言いました。

「そんなに硬くならなくていい。もっと、楽にして良い。」

「はい」

だめです。あれを見ていると無性に剥ぎ取りたくなります。見ないようにしましょう。
今取ってしまったらわたしの第一印象が悪くなってしまいます。わたしはなるべく静かに学校生活を送りたいのです。

そんなことを考えていると、教頭先生が話し出しました。

「さて、そろそろ君の仮宿に行こうか」

「仮宿?」

寮があるとは聞いていましたが、何故、仮宿なのでしょう?

「それは歩きながら話そう」

「はい」

そう言って歩き出した教頭先生のあとをついて行きました。

「この学校はね、能力のレベルと、魔力の級でクラスや寮が決まるんだ」

「能力のレベルと、魔力の級、ですか?」

能力はともかく、魔力に級なんてあったんですね。初めて知りました。

「そう、能力のレベルは1~7、魔力は初級、中級、大級とある。」

「そうなんですか。」

色々あるんですね、能力と魔力にも。

「君はまだ能力のレベルと、魔力の級は分からないから仮宿なんだよ」

「あれ?わたしが住んでいた世界でこっちに来る前に検査しましたよ?あれでは分からないのですか?」

「ん?ああ、人間界でした検査は能力と魔力が無いか見るだけの検査だからね、レベルと級までは分からないんだよ」

「そうなんですか」

どうせならそこで一緒に検査してもらいたいものです。

「さ、着いたよ、ここが仮宿だ。」

「ここですか」

そこには、白く塗られた壁にでかでかと出界生用仮宿と書いてある看板が掲げられたアパートがありました。

「君は、305号室だよ、君の荷物はもう部屋に運ばれているから、では私はこれで」

そう言い残すと、教頭先生はそそくさと帰って行きました。
わたしは、教頭先生を見送ると、中に入っていきました。

305号室の扉を開けると玄関などなくそのまま部屋になっていました。
どうやらわたしが住んでいた日本製ではないようです。
少し気は引けますが土足で部屋へ入ります。今度家用でスリッパを買おうとひそかに思いました。

「すごいですね」

中に入ってみると、仮宿とは思えないほど広かったんです。
思わず歓声が漏れます。
床も磨きたてのように綺麗で、部屋の真ん中にはテーブルとテレビが置いてあります。
隣の部屋に繋がる扉を開くと、これまた広くてびっくりしました。
けれど、

「何で、ベットがお姫様級にでかくて天蓋がかかってるのでしょう。」

この部屋も無駄に広いですし、家具は高級っぽくて、ベットはお姫様級です。
ここ本当に仮宿ですか?
そう思いながら、部屋を見渡すとリビングの端っこにぽつんとわたしの荷物が置いてありました。(この部屋に不釣合いですね~)と思いながら、とりあえず荷物を片付けようと思いました。鞄に手を掛け早速取り掛かりました。



                
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