今すぐここで抱きしめて
いやいや、そんなハズは……と疑いながら視線を合わせてみたら、


「歩美さん、いいですか?」


やっぱり飯田くんで、何事もないように私をファーストネームで呼ぶと、ポカンとしている私をよそに、ファイルを手に部屋の隅に衝立で仕切ってある相談用のテーブルへと移動してしまった。


「歩美さん……?」


「あ、うん。ちょっと行ってくる」


彩ちゃんの呼びかけにハッと我に返ると、飯田くんと担当しているファイルを手に立ち上がった。


衝立の中に入ると足を組んで座っていた飯田くんが私を見上げた。


「相談って?」


できるだけ平常心を保つようにしながら私もイスに座り飯田くんと視線を合わせると、じっと私を見つめて……


そうじゃない。


無言で見つめる彼の視線の先にあったのは私の耳にあるピアスだった。


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