Summer again with
『夏休みの課題?』
頷いて『量が多いので』と言うと、『敬語じゃなくていーよ』と笑われた。
『ミミちゃん、この辺の子じゃないよね?』
課題を進めていると、隣でナツさんが海を眺めながら話しかけて来る。
『違う』と答えると、『やっぱり』と言われた。
『見ない顔だなーと思って。この町ちっさいし人口も少ないしさ、この町の人は、大体わかるんだよね』
…すごい、ひとだな。
確かに最寄りのスーパーも車で三十分かかる距離にあるし、山と木ばっかの町。
空気が綺麗で良いところだよ、というおじいちゃんは、ここの地元の人だ。
『夏のこの町は、ほんとに好き。海は綺麗だし、木がいっぱいあるから、涼しいし』
太陽に照らされてキラキラ輝く海を、優しげに見つめる。
…うん、綺麗だね。
でも……
彼はこっちに目を向けると、私の課題を見て『あ』と声を出した。
『ミミ、って、そー書くの?』
その目は、課題の上の方に書かれた【二年三組 東野 未海】の文字を見ているようで。
『すげー!珍しいな』
…そう、かもしれない。
けど……
『…この名前、嫌い』
ぽつりと呟いた言葉に、ナツさんは驚いたように私を見た。
『なんで?』
私は目をそらしながら、小さく口を開く。『前に溺れかけたことがあって』。