黄昏に暮れる君へ

赤い薔薇と銀のいばら


…ここはどこ?

「……ローゼ=イリュジオンの、…端の端ってところかしら」

 城を抜け出してさまよってみれば…。
なんて美しい場所なのかしら。
 こんなにも薔薇が咲き乱れているところは、見たことが無かったわ。
お兄様が過保護なせいね、きっと…。
ずっとあんな寂しいお城に閉じ込められていては、息ができないもの。
それにしても…、

「ここには、赤薔薇しか無いのね…?」

もっと色とりどりでもいいと思うのだけれど…。
でも、おかしいわね。
ローゼ=イリュジオンでは、赤の薔薇は命の象徴…、何よりも神聖な存在だわ。
それをこんなに植えるだなんて、禁忌を犯すにも程があるでしょうに。

「…でも、まあ。
 今だけは、良いかしら」

芳しい薔薇の香りに身を任せて、こうして月明かりを浴びれば、とても気分がいいから。
包まれていく。
赤い、赤い、薔薇の闇…――。


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