素敵な上司とキュートな部下
つまり、月報のチェックは明日、いつも通りに大輔がやればよいわけで、わざわざ今日、しかもやった事もない加奈子がやる必要はなかったのだ。


香川はすぐに理解した。宣伝課の西村が、加奈子へ嫌がらせのためにしたのだと。加奈子の歓迎会の時も、今年の幹事である西村が、当然するべき加奈子への連絡をしなかったのも、西村の加奈子に対する嫌がらせである事に香川は気付いていた。


(クソッ。あの女……もう許さん!)


しかし、香川はその事を加奈子に言わない事にした。今夜、しかも自分がする必要はなかった仕事だと加奈子が知ったら、きっと彼女はがっかりするだろうし、そうなっては、こんな夜遅くまで頑張った加奈子が可哀想だからだ。


それと、西村が加奈子を妬んでいる事も、もし加奈子がその事を知らないのであれば、敢えて知らせたくはないと香川は思った。

それは、誰しも自分が他人から妬みのような負の感情を持たれているとは知りたくないだろうという考えと、そのような状況を招き、解決出来ていない管理者としての香川の落度を、出来れば加奈子に隠しておきたい、という姑息な考えもあった。

他の者からどう思われても構わないが、加奈子にだけは、自分を信頼に足る上司と思われたい香川なのであった。

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