素敵な上司とキュートな部下
「僕も手伝うよ?」

「あ、いいえ、もう少しで終わりますから大丈夫です」

「そうか?」


香川はそう言うと、自分の席に戻って行った。


(あれ? 部長はお帰りにならないのかしら……)


加奈子は、用事が済んだはずなのに帰らない香川が気になりつつも、仕事に精を出した。



「終わった……」


しばらくして、ようやく月報のチェックが終わった。時刻は既に夜の10時になろうとしていた。


「終わったかい?」

「はい」

「そうか。食事はしてないんだろ? 食べて帰らないか?」

「はい。でも……」

「嫌かな?」


加奈子は確かに食事を摂っていなかったが、あまり空腹は感じてないし、疲れた上に上司と行くのは気を使うから、正直なところ嫌だなと思った。しかし、香川はそのために帰らずに待っていてくれたと思われ、それなのに断るのもどうかと思い、


「そんな事はありません。では、お供します」


と答えた。すると香川は「そうか?」と言い、嬉しそうに微笑んだ。

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