素敵な上司とキュートな部下
二人は会社を出て食事が出来る店を探したが、どこももう閉店かその間近だった。24時間営業の牛丼店があったが、香川はそれをスルーした。


「部長、今の牛丼のお店でよいのでは……?」

「いやいや、そういう訳には行かないよ」

「そうですか……」


実際に加奈子は牛丼でもよかった。嫌いではないし。


(香川さんって、ああいう大衆的なお店では食べないのかしら。確かに香川さんが牛丼を食べるシーンって、イメージしにくいかも……)


結局二人は居酒屋へ入って行った。まずは定番の、生ビール。


「はあー、美味しい」


昼間の暑さが残る街並を歩き、熱くなった体に生ビールの旨さは格別で、つい感嘆の声を漏らす加奈子であった。


「君はたしか“付き合い程度”と言っていたが、なかなかどうして酒に強いようだね?」

「はい、すみません……」

「いやいや、謝る事はないよ。さあ、腹の足しになりそうな物をじゃんじゃん頼みなさい」

「はい。えっと……」


ビールで胃が刺激されたためか、加奈子は急に食欲が湧き、肉じゃがや唐揚げやら4品ほどを選んだ。


「あの、部長さんは?」

「僕は少しでいい。社に寄る前に食べたからね」

「そうですか……」


やはり香川は自分に気を遣ってくれたのだと分かり、申し訳ないなと加奈子は思った。

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