素敵な上司とキュートな部下
加奈子は、出て来た料理を片っ端から平らげていった。


「いい食べっぷりだね……」

「え? あ、お腹が空いてたもので、つい……。すみません」

「謝る事ないさ。見ていて気持ちがいいよ。僕は美味しそうに食べる女性が好きなんだ」

「……え?」

「あ、一般論さ。特別な意味じゃないよ?」

「そ、そうですよね?」


(ああ、びっくりした……。香川さんから“好き”って言われたのかと思っちゃった。そんなはずないのに……)



「岩崎君?」

「はい?」

「前から君に聞いてみたいと思ってたんだが……」

「何でしょうか?」

「やっぱり止(よ)すか。セクハラで訴えられたら大変だからな」

「そんな事、私はしませんよ。何でも答えますから、言ってください」

「そうかい? じゃあ、言おうかな」


香川は加奈子から視線を少し逸らし、照れたような、あるいは恥ずかしそうな顔をした。それは、加奈子が今までに見た事のない、香川の表情だった。

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