素敵な上司とキュートな部下
「き、君は、その……彼氏はいるのかな?」

「……は?」


加奈子は、香川がどんな事を聞いて来るのか、ドキドキしながらそれを待っていた。香川の、“セクハラ”と言ったり照れた様子から、尋常ではない質問が来るのだろうと思ったからだ。例えば、初体験はいつだったのか、など。


ところが、いざ聞いてみるとそんな他愛のない質問で、加奈子は拍子抜けしてしまった。


「あ、いや、ごめん。失礼した。君ほどの器量で彼氏がいないわけないな。今のは忘れてくれ」


香川は、加奈子の反応を変に誤解して平謝りした。加奈子に、『なに、当たり前のこと聞いてるの?』と言われたような気がしたのだ。


「ち、違います。彼氏なんて……いません」


加奈子は、顔を赤くしながら香川の言葉を否定した。顔を赤くしたのは、香川が言った“君ほどの器量で”に反応したためだ。それはつまり、香川から『君は綺麗だよ』と言われたに等しいのだから……

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