素敵な上司とキュートな部下
「そうか、いないのかあ。そうか、そうか……」


香川は同じ言葉を何度も呟き、可笑しそうに、顔に薄笑いを浮かべていた。

加奈子はそれを、自分がバカにされていると受け取り、


「だったら、部長さんはどうなんですか?」


と、口を尖らせて言ってみた。言ってから、どうせ香川には恋人やら愛人やらがいるはずで、下手に振ってノロケ話でもされたら嫌だなと、言った事を後悔した。ところが……


「僕もいないよ」


あっさりと、意外過ぎる返事が返って来た。


「嘘ばっかり……」

「いや、本当だよ」

「そんなはずありません」


加奈子は香川の言葉を信じなかった。なぜなら、香川ほどの男に彼女がいないなんて有り得ないと思ったから。


「本当にいないんだけどね。どうして信じてくれないのかな? ひょっとして、僕に関して変な噂が流れてるとか?」

「それは知りませんが、香川さんに彼女がいないなんて信じられません」

「と言うと?」

「香川さんは、とても素敵ですから……」


それを聞いた香川は、ハッとして目を見開き、たちまち顔を赤くしていった。

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