素敵な上司とキュートな部下
「志穂……。やっぱり訂正した方がいいのかな? “あれは考えなしでした”って……」

『ん……それはやめた方がいいんじゃない? 相手に対して失礼な気がするし、香川さん、きっとがっかりするわよ?』

「それは確かにそうかもだけど、もし本当に誘われたらどうすればいいの?」

『その時に言えばいいんじゃない? “あの時は急いでいたので生返事してしまいました”って』

「ああ、そうかあ。そんな事が実際にあるかも分からないんだし、それでいいのよね?」


(うん、そうしよう。さすが志穂だわね……)


と安堵した加奈子だったのだが、


『またはさ……』


と志穂の言葉は続いた。


『行っちゃえば?』

「え? どういう事?」

『だからさ、その時は香川さんのマンションに行っちゃえばいいんじゃない?』

「えーっ? ちょっと志穂ったら、冗談はやめてよ……」

『あら、私は本気よ?』

「嘘だあ。もし行っちゃったら、何をされても文句は言えないんだよ?」


という事だと加奈子は思っている。お互い大人の男と女なわけで、男の部屋に上がっておきながら、何もされないと思う方がどうかしていると……

それはもちろん、志穂も同じ考えのはずなのだが……


『そうよ。ダメかしら?』


志穂は、しれっとした調子でそう返してきた。

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