素敵な上司とキュートな部下
それのボタンらしき物を大輔が指で押すと、ピュピュという音がして、加奈子の目の前の、シルバーボディの新車と思われる車のハザードが点滅した。つまり、大輔は部屋に車のキーを取りに行ったのだった。

大輔はその車のドアを開き、イグニッションにキーを差し込んでスターターを回すと、重低音の唸り声を発して車のエンジンが始動した。


「まだ中は暑いんで、少し待ちましょう?」

「これ、嶋田君の車?」

「はい、そうなんです。無理して買っちゃいました」


大輔は照れたような、それでいて誇らしげな顔でそう答えた。


「この車で出掛けるの?」

「はい。あれ、言いませんでしたか? 電車より車の方が都合がいいからって……」

「ああ、そういう事ね……」


加奈子は車の事は聞いた憶えがないが、“都合がいい”という言葉には憶えがあった。それを加奈子は、ホテルよりもアパートの方が“都合がいい”と解釈したのだ。アレをするには……


(やだ、私ったら恥ずかしい勘違いを……)


思わず顔を赤くする加奈子だった。


「主任、顔が赤いですよ?」

「そ、そう? あ、暑いからよ」

「そうですか。もうちょっと辛抱してもらえますか? 今、冷房をガンガン回してますから」

「う、うん……」

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