『一生のお願い、聞いてよ。』


先生『どうしたの?そんなに目真っ赤にさせて』

「………」

先生『原中さん?』




先生がしゃがみこんであたしの顔を覗き込んだ。

泣き顔なんか見せたくなくて、プライドが許さなくて、あたしは顔を反らした。



先生『何があったの?俺で良かったら話聞くからさ』

「……先生には関係ないよ」

先生『そりゃ関係ないかもしんねぇけどさ、原中さんは俺の生徒だからさ!』



生徒?

あたし、塾クビになったんだよ?

それでも、まだ生徒なの?



「先生…」

先生『なに?』

「あたし…」



涙が溢れて言葉が続かない。




先生『とりあえず、ファミレスでもいこっか!』




先生はすぐそこに停められていた車にあたしを乗せた。


車の中は、ずっと無言だった。



ファミレスについて、先生が店員に2名と伝え、席に案内された。


先生は、席についていきなりタバコに火をつけてメニューを開いた。



先生『原中さんもタバコ吸っていいよ』

「え?」

先生『知らないとでも思った?』

「なんで知って…」

先生『そりゃー、あんなタバコのにおいプンプンさせてたら気付くさ(笑)』

「でも、先生がタバコ吸っていいよなんて言っていいの?」

先生『んー、先生っつっても、塾だしな、しかも今は先生と生徒じゃなく、健二とりょうだ。プライベートだからな(笑)』


子供みたいにいたずらっぽく笑う先生に少し救われた。



「あ、でもタバコ家に忘れてきちゃった」

先生『なら俺の一箱あげるよー(笑)』

先生はカバンの中から新しいタバコをくれた。


「え?いいの?」

先生『いいよー、さっきカートン買ったばっかだし!』

「じゃあ、遠慮なく。ありがとう」


あたしは先生の手からタバコを受け取り、すぐに開けて火をつけた。



先生『何か頼みなー!今日は俺の奢りだ!』


先生が笑ってメニューを渡した。



「じゃあ、チョコレートパフェ食べたい!先生は?!」



周りのお客さんがパッとあたしたちの方を見た。




先生『ちょ、先生てやめろ(笑)視線が痛い(笑)ここでは健二って呼べ(笑)』

「け、けんジ」

先生『カタコト(笑)』

「うるさい(笑)」




いつの間にか涙も引っ込んで、自然と笑うことができた。

先生ってすごいって思った。




店員を呼んで、あたしはチョコレートパフェ、先生はハンバーグステーキセットを頼んだ。



「ガッツリだねー(笑)」

先生『仕事終わりで腹減ってんだよ(笑)』

「そっかー(笑)」

先生『で、何があった?』



急に現実に引き戻されて、自分の笑顔が消えていくのが分かった。




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