紫陽花ロマンス


「そう、よかった……お母さん、家に居たら迎えに行けたのにって思ってね。だけど、美空は本当に雨女だね……あっ、みいちゃんが晴れ女なのかもね」


安堵したように、母は高らかに笑う。


「そうだよ、私が雨女ですから」


と、私も笑って返した。光彩を起こさないようにと気にしながら。


笑うって大事だと思う。
つまらないことでも、笑うだけで部屋が明るくなる気がする。


光彩と二人暮らしだから尚更。
まだ光彩は話し相手にはならないから、家に帰ってきたら母と電話で話すぐらいしかない。


といっても実家は、ここから車で五分も掛からない。このマンションを選んだ理由は、実家と保育所と駅から近いから。


その気になったら、いつでも帰ることができるし、現に週に一度以上は帰っている。



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