はじまりは政略結婚
車はあっという間にオフィス街を抜けて、国道を走り始めている。

もうすぐ行くと、右側に海岸が見え始めるというのに、景色より智紀が気になって仕方ない。

その彼の横顔を見つめながら、そっと口にしたのだった。

「それって、例えば彼氏とかっていうこと?」

すると智紀は、ほんの一瞬だけ視線をこちらへ向けた。

「そうだよ。由香の今までのプライベートなことは、全然知らないから。聞きたいような、聞きたくないような、複雑な感じだ」

苦笑いをしつつも、智紀は快適に車を走らせている。

海水浴にはまだ早いのと、波が穏やかな場所だからか、土曜日の昼間でも人が少なく、車道も渋滞していない。

この分だと、ちょうど昼には着きそうだ。

ホッとしながら、彼の言葉に心をざわつかせる自分がいる。

智紀が、少しでも私の過去を気にしてくれるのは、やっぱり嬉しかったから。

「気になるっていうなら私もだよ。正直、今まで智紀のことを気にも留めてなかったから、元カノのこととかも、全然知らないし……」

そう言うと、彼は声に出して笑ったのだった。

「ヒドイよなぁ、それ。でも、今となれば、それで良かったかもしれない」
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