はじまりは政略結婚
さりげなく目を動かすと、店内にいる20代くらいの女性客たちが、頬を緩めて智紀に視線を向けていた。

「智紀、みんなが見てるけど、副社長って知ってるのかな?」

店員さんに席を案内されながら小声で話しかけると、彼は軽い感じで聞き流した。

「まさか。そこまで顔割れしてないよ。それより、本当に景色のいい場所だな。BGMも、海を連想させる爽やかな感じだし」

ウッド調の椅子に座りながら、彼は窓に視線を移す。

「うん。そうね……」

だとしたら、智紀がカッコいいから見ていた、ということなのかもしれない。

想像出来ることとはいえ、ちょっと面白くない。

「BGMといえば、智紀がプロポーズしてきた時に流れてた音楽、まるで合ってなくて変だったよ」

メニュー表を開きながら、じわじわと沸くヤキモチを抑える。

その反動からか、可愛くない言葉が出てしまった。

「そうか? むしろ、ミスマッチ具合がいい時もあるんだよ」
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