はじまりは政略結婚
あの時は、そうせざる得なくて、一応受けた形にはなったけど、それか本心でないのは、彼もよく分かっている。

だからきっと、もう一度聞いてくれたんだろうけど、それだけこちらの返事も真剣に答えなければならない。

今ここで、『うん』と答えたら、もう後戻りは出来ない。

「由香、返事は貰えないのか?」

黙ったままの私に、智紀は優しく問いかける。

あの時と違うのは、プロポーズを受けることを前向きに考えているということ。

だけど、里奈さんや涼子さんのことを、うやむやにしたまま結婚するわけにはいかない。

たとえ政略結婚でも、幸せを掴みたいから。

「まだ、気持ちがハッキリと分からないの。会社の都合もあるんだろうけど、もう少しだけ時間を貰えないかな?」

自分なりに誠意のつもりで返事をすると、一瞬寂しげな表情を見せた智紀が小さく頷いた。

「分かった。業務提携の都合もあるから、夏の終わりには返事を聞かせてくれるか?」
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