はじまりは政略結婚
きっとそんな場所には、智紀は行ったことがないだろうと思い誘ってみると、予想通り彼は目を丸くしている。

「へぇ。行ってみるか。それにしても、そんな穴場な場所を知ってる由香がスゴイな。そこも友達と行ったのか?」

会計は智紀が済ませてくれ、私たちは店を後にした。

「そうよ。学生の頃に行ったの。また疑ってる……?」

あんまり気にされると、忘れていたい海里が頭をかすめて気が重くなる。

すると車に乗り込みながら、智紀が苦笑いで首を横に振った。

「ごめん。そんなつもりじゃなかったんだ。今日、婚約指輪をつけてきてくれたろ? その由香の気持ちで、バカな嫉妬もほとんど消えたから」

婚約指輪をはめたことを、そんなに喜んでくれるとは思わなかった。

普段は、ライオンのたてがみヘアをなびかせて、自信に満ち溢れたオーラを出している御曹司なのに。

そんな智紀が、ささいなことで喜んでくれることが意外だった。

そう思うとなおさら、海里のことを知られたくない。

智紀が、その事実に辿り着かなければいいのだけど……。
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