はじまりは政略結婚
元カノからの宣戦布告
バッタリ会ったのは、海里ではなく里奈さんで、突然呼び止められて動揺する。

「あの……。本田里奈さんですよね?」

分かっているけど確かめる為に聞くと、彼女は小さくため息をついた。

「智紀って、私のことをあなたに話してないの?」

ちょっとイライラしたような口調に、ますます戸惑いが増す。

「涼子さんのスタイリストということと、智紀の事務所に所属しているということは聞いてますけど……」

何で怒っているのか分からないけど、険しい目つきをしていても、顔立ちは可愛らしい人に変わりはなかった。

そして、初めて会った時と同じようなカジュアルスタイルが、彼女をより垢抜けたオシャレな人に見せていて、近くにいると余計に気後れする。

「へぇ。それしか聞いてないんだ? どおりで私のことを、よく覚えていないわけね」

どうやら、さっき名前を聞き返したのが気に入らなかったらしい。

覚えていないから聞いたのではなく、自分の中で確認したかっただけなのに。

意外と難しそうな人に思えて、すっかりタジタジになってしまった。
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