はじまりは政略結婚
「ごめんね、お兄ちゃん。忙しいだろうとは思ったんだけど、教えてもらえたらなって……。今夜は、智紀は遅いから美容院に行くにはいいチャンスなの」

両手を顔の前で合わせて小さくなる私に、兄は「やれやれ」とため息をついている。

行きつけの店を持たず、浮気ばかりしていた私には、信頼出来る美容院がない。

せっかく一大決心をしてイメチェンを図ろうとしているのだから、美容院選びは失敗したくないのだ。

その点、兄なら涼子さんのツテもあり、いい店を知っているはずだ。

そんな期待を込めて、聞いてみたのだった。

「由香の気持ちは分かるけど、大事なのは見た目じゃないと思うけどな」

「それは分かってるの。だけど、まずは見た目のイメチェンをしたくて……。自分が変わるキッカケが欲しいから」

もちろん、智紀の望みがそれじゃないことは承知してる。

だけど、そこから自分に自信がつく気がしていた。
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