はじまりは政略結婚
「お待たせしましたぁ。エキストラの穴埋めは、副社長のご婚約者様に決定でーす!」

エレベーターを降り、10階奥のスタジオに入るとすぐに、里奈さんが室内に響き渡る声で言ったのだった。

それに真っ先に慌てた素振りを見せたのは智紀で、彼女にキツイ視線を向けた。

「さっき、それはしないと言ったろ?」

声のトーンを抑えながらも、口調そのものは厳しい。

だけど里奈さんは悪びれた様子もなく、智紀から目をそらしている。

それにしても、海里はどこにいるのだろう。

スタジオには、スタッフと桜さんしか見当たらない。

緊張しながら辺りを見回していると、私に気付いた桜さんが小走りで駆けてきた。

「百瀬さん⁉︎ すごく素敵な雰囲気に変わってるじゃないですか! もしかして、この撮影の為ですか?」

カジュアルなパンツルックの彼女は、屈託ない笑顔で私の手を取ったのだった。
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