はじまりは政略結婚
必死に弁解する私は、気がついたら立ち上がっていて、すがるように智紀を見上げた。

誤解をされたくない、そう思う気持ちの強さがあって、少し焦りも感じ始めている。

「本当か? あいつが今日持っていたネックレス、お前とのペアリングなんだろ?」

「ちょっと……、なんでそこまで……?」

まるで、海里との過去を身ぐるみ剥がされているみたいで、気分は良くない。

だけど、彼を責める余裕がないくらい驚いてしまった。

「あいつ、由香と別れてから特定の女はいなかったみたいなんだよな。だから、あの指輪は由香とのペアリングだと思った。だいたい男が意味なく、ネックレスに指輪はつけない」

そこまで言われて、返す言葉が見つからない。

それにしても、海里が私と別れてから、特定の女性を作っていないのには驚いた。

「お前もまだ持ってるのか? あいとの指輪」

「それは……」

ひどいことを言われても、思い出にするには時間がかかった海里との過去。

私と海里との時間を象徴する指輪を捨てるタイミングを、完全に逃してしまっていた。
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