はじまりは政略結婚
「あれ? いつの間に……」

状況を理解するまでに、少しの時間が必要だったけれど、夢見心地で感じたあの香りは、智紀のものだったと分かった。

「本当に迎えにきてくれたんだ……」

隣には彼の姿はないから、もう出勤したに違いない。

嬉しさを感じつつも、手間をかけさせたことへの罪悪感もこみ上げる。

「今夜、謝らなくちゃ」

ゆっくりとベッドから降りようとした時、ふと左手薬指に指輪がはめられていることに気付いた。

海里との撮影ではずしたままだったけれど、智紀がはめてくれたらしい。

改めて左手をかざしてみると、今まで感じなかった愛おしさがこみ上げてくる。

「智紀……。好き……」

そっと指輪にキスをしてキッチンへ行くと、『おはよう』のメモと一緒に、朝ごはんが用意されていた。

いつもと変わらない優しさに、ますます昨夜の行動を反省する。

夢にまで見て、結局私は智紀が好きだということに、改めて気付かされたのだから。
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