はじまりは政略結婚
遠慮がちな彼の言葉に、口を尖らせる。

「やっぱり、そう思ってたんじゃない……」

恨み言を言った私に、智紀は慌てて否定した。

「いや、そういう意味じゃないんだ。ただ……」

今度は顔を赤らめて、ボソッと言う。

「他の男が気付くだろ? 由香の可愛さを知ってるのは、オレだけでいい」

「やだ、智紀ってば……」

そんなことを言われたら、こっちまで顔が赤くなってくる。

そして、素直にならないといけない、その気持ちもより強くなっていった。

一度息を飲み、軽く深呼吸をして口を開く。

「本当に、本当にごめんなさい。そして、今朝はありがとう。智紀が、連れて帰ってきてくれたんでしょ?」

あの抱き上げられた感触と香りは、きっと智紀のものだ。

すると彼は、予想通り小さく頷いた。

「やっぱり……。本当にありがとう。嬉しかった」

「そのセリフ、まんまオレのセリフだよ。夢にまで見てくれて、嬉しかった」
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