はじまりは政略結婚
たしかに、それは贅沢だ。

同じ『社長』の子息でも、智紀は別世界って感じがする。

「涼子さんって、ここに詳しいんですね? 今までにも来たことがあるんですか?」

まさか、智紀とふたりきり……なんていうことはないよね?

すると、涼子さんは慌てて弁解してきた。

「うん、来たことはあるのよ。智紀の好意でね。祐也と、周りの目を気にせず行けるところって、ここくらいしかないから」

ちょっと恥ずかしそうな涼子さんに、私はどこか嬉しかった。

「お兄ちゃんと、なんですね……。そっか、ここならマスコミに追われることもないですもんね」

「そうなの。だから、祐也もここが落ち着くみたいで、智紀と仕事の話をする時は、ここへ来ることもあるみたいよ」

それは初耳だ。

兄からも智紀からも、聞いたことはない。

それなのに、涼子さんが詳しいことに嫉妬を覚えた。

「今日も、業務提携の話を煮詰めるのが目的。そこに私たちがお邪魔したわけ」

「だから、首脳会談なんですね」

今日の目的が、仕事絡みだなんて知らなかった。

一言も、そんなことは言ってなかったもの。

だけど、どうして話してくれなかったんだろう。

急に感じる疎外感に、心の中がモヤモヤしてきた。
< 238 / 360 >

この作品をシェア

pagetop