はじまりは政略結婚
驚きで絶句する私に、彼は目を細めて微笑んだ。

「そんなに驚くなよ。本当のことをいったんだけどな」

「驚いちゃうよ……。だって愛してるなんて言うから」

初めて言われたセリフに、私も同じように返したいのにできない。

それは、智紀への愛情不足からじゃなくて、心の引っかかりが取れていないから。

里奈さんや涼子さんのことを曖昧にしたまま、愛してるなんて言えない。

この言葉を口にするということは、彼のプロポーズを受け入れることと同じだから。

「愛してるんだから、それを伝えるのは当たり前だろ? 由香、オレはずっとお前の側にいたいよ」

智紀はそう言った後に私を抱き上げてベッドへ降ろすと、待ちきれないとでも言わんばかりに服を脱がせたのだった。

私からの返事も気持ちも聞こうとしなかった智紀は、きっと気づいてるのだと思う。

それが言えないということを……。

だって彼は、こっちが思う以上に勘が鋭くて、私をよく見ているから。

だから、余計に思ってしまった。

この心のモヤモヤをどうにかして、智紀に伝えたい。

『私も愛してるよ』って……。
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