はじまりは政略結婚
「やめて! それだけは、絶対にダメよ!」

「じゃあ、さっさと返事しろ。今なら、嶋谷も祐也さんも、名誉だけは守られるんだ。業務提携が白紙になっても、『敏腕副社長』なんだから、なんとかできるだろ?」

ひどい……。なんて、卑怯で卑劣な脅しなんだろう。

堪えきれなかった涙が、ひとつふたつと落ちていった。

「分かったわよ……。智紀には、婚約破棄を言う。だから、週刊誌には載せないで」

涙で滲む目で睨みつけると、海里はなんの愛情も感じられない笑みを浮かべた。

「いい子だな、由香は。じゃあ、写真は保留にする。きちんと婚約破棄を世間に公表したら、ネガは渡すよ」

「分かった……」

それだけ答えて、足早に店を出た。

海里が、なぜそこまでするほど智紀に恨みがあるのか、まるで理解できないけど、写真を公表させるわけにはいかない。

潰れそうになる気持ちを、かろうじて奮い立たせ、マンションへ帰ったのだった。
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