はじまりは政略結婚
戻るとそこには智紀の姿があり、仁王立ちをして私を迎えた。

「由香、もう11時だぞ? どこへ行ってたんだよ? 遅くなるなら、なるで、ちゃんと連絡くらいしろ」

スーツ姿のところを見ると、彼も帰ってきたばかりらしい。

心配をかけたことを申し訳ないと思いながらも、これから言おうとしていることが何十倍も申し訳なくて、智紀をまともに見られなかった。

「ったく、そんなに落ち込むくらいなら、連絡だけはしろ。分かったな?」

小さくため息をついた智紀は、私の腕を優しく掴み、そして引き寄せようとする。

彼が私を抱きしめようとしたのが分かって、咄嗟にその手を振りほどいていたのだった。

「やめて! 私、智紀に大事な話があるの……」

声が震える私を怪訝な様子で見た智紀は、「何?」と少し強張った口調で聞いてきた。

「まだ、プロポーズの返事をしてなかったでしょ? それを伝えたくて。……本当にごめんなさい。私、智紀とは結婚できません」
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