はじまりは政略結婚
頭を下げたまま、それを上げられないでいる。

智紀の反応を見るのが怖いからだ。

すると数秒の間ののち、彼の声が聞こえたのだった。

「何で?」

「それは、他に好きな人ができたから」

智紀の質問は当たり前に想定していたから、返事もあらかじめ決めていた。

それを納得してくれるかは分からないけど、この答えが一番いいと思ったのだった。

「好きな人って誰? 由香、顔を上げてくれないと、ちゃんと話ができないだろ?」

そう言われ、ゆっくり顔を上げると、智紀の険しい表情が見えた。

「海里よ……。再会して、やっぱり彼が好きだと思ったの。実は、ふたりで会ったりもして、過去のことを謝ってもらえたから……」

こう言えば、一番納得してくれるんじゃないかと思う。

絶対に、海里とヨリを戻すつもりはないけど、ここではそう言った。
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