はじまりは政略結婚
その朝は、もう朝食の準備はされていなかった。

それは当たり前なのに、どうしてか涙が溢れる。

こんな風になって、改めて彼の存在の大きさを実感するなんて、皮肉以外の何者でもない。

どうしてもっと早く、智紀の優しさに気づけなかったんだろう。

あんなに長く兄といて、私の側にもいた人だったのに……。

ちゃんと気づけていれば、もっともっと早く彼を好きになっていれば、こんな事態にならなかったかもしれない。

全てを後悔しても遅くて、その日の仕事終わりに兄から連絡がきた。

それは、兄のマンションへ来るようにとの命令で、一晩にして智紀の側を離れることになったのだった。

< 265 / 360 >

この作品をシェア

pagetop