はじまりは政略結婚
「智紀から聞いたよ。今は詳しくは聞かない。いろいろ、事態が複雑だから、当面はここにいてくれるか? 実家に戻られると、ややこしくなるから」

「う、うん……。ごめんね、お兄ちゃん」

さすがに、普段は温和な兄も、今日は口調がキツイ。

荷物もいつの間にか移動していて、その状況に涙が込み上げてきた。

「由香を責めてるんじゃないよ。人の気持ちをとやかく言う権利なんて、誰にもない。それは、智紀もよく分かってる。だけど、お前たちのことは表向き政略結婚でもあったから、簡単にはいかないことだけは分かって欲しい」

「うん。もちろんよ……」

私の様子を察知して、フォローをしてくれた兄の優しさには感謝だ。

本来ならきっと、もっと責められるべきだから。

力なくソファーに座る私に、兄は釘をさすように言ったのだった。

「それから、しばらくはおとなしくするように。オレが指示するまでは、何かしちゃいけないぞ」

その言葉に、弱々しく頷くだけで精一杯だった。
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