はじまりは政略結婚
「オレは、由香を守りたいと思ってる。それは智紀も同じだと思うよ。今、由香が何かを話せないのを、責めるつもりなんてない。むしろ、そんな由香を絶対に早く救いたいと思ってるくらいだ」

「お兄ちゃん、なんで私が考えていることが分かるの……?」

話せない事情を分かってくれること、そして守りたいと言ってくれたこと、そこに智紀の名前も出してくれたこと、その全てが嬉しかった。

堪えきれず涙ぐむ私に、兄は小さく笑ったのだった。

「何十年、兄妹をやってると思ってるんだよ。オレは充分、自分がシスコンだって自覚はあるから」

つられて笑った私の頬を優しくつつく兄に、心底感謝の気持ちでいっぱいだ。

智紀と別れて初めて、少しだけ心が軽くなった気がする。

その後やってきた、スパイシーチャーハンにタンドリーチキンは、久しぶりに美味しいと思えた料理で、それと同時に兄の言葉を思い返していた。

『早く救いたい』、たしかにそう言っていた気がする。

つい聞き流してしまったけど、あれはどういう意味だったんだろう。
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