はじまりは政略結婚
智紀の言葉に、目を真っ赤にした里奈さんが少し顔を上げた。

そんな彼女に、智紀は笑顔を見せない。

ただ真剣な眼差しで、里奈さんを見たのだった。

「里奈の気持ちを、踏みにじったのはオレだから。由香への想いを隠して、お前を好きな振りをしていたんだ。恨まれて当然だ」

智紀の私を想う気持ちは胸を熱くするけれど、喜んでいる場合ではない。

里奈さんと付き合っている時にいろいろあったみたいで、ここで聞いていてもいいのか、それすら疑問に思えてくる。

すると、里奈さんは力なく首を横に振ったのだった。

「それは違うわ、智紀。智紀の気持ちを知っていて、告白をしたのは私だから。智紀が一生懸命、大事にしてくれようとしていたのは分かっていたのに。それなのに……」

大粒の涙をこぼしながら、その後の言葉が続かない里奈さんを、私たちはしばらく見守っていたのだった。
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