はじまりは政略結婚
唇を尖らせる私の隣に、智紀は週刊誌を片手に座った。

「智紀なんて、全然緊張してなかったでしょ?」

「してない、してない。むしろ、ワクワクしてたから」

「ワクワク?」

余裕の笑みをみせる彼に、私は首をかしげた。

けっこう厳かな雰囲気だったから、とてもワクワクなんてできなかったけど……。

そんなことを考えていると、智紀は私の頬を両手で覆った。

不意の行動に、こっちはドキドキする。

「だって、これで由香が正式なオレの婚約者になったんだ。11月には、堂々と『妻』だって言える。ワクワクしないわけがないだろ?」

「智紀……。私との未来を、そんなに楽しみに思ってくれてるの?」

胸が痛いくらいにキュンとなりながら、今のこの幸せに心から感謝をする。

「当たり前だ。オレがどれだけ由香を想ってきたか、まだ分かっていないんだな」

意地悪く言った智紀は、私に唇を重ねたのだった。
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