はじまりは政略結婚
すると竹内さんは、数秒ジッと私を見つめた後、ニヤッと笑ったのだった。

「そこがいいのかもねぇ。確かに、副社長は華やかな人を見慣れてるだろうけど、だから好きになるのとは別の話だろうし」

「そうですか……?」

と言いつつも、智紀も同じようなことを言っていたなと思い出す。

本当にそうなのか、まるで自信がないのは、やっぱり過去の恋愛がトラウマになっているからだ。

「さあさ、仕事始めましょ。由香ちゃんには、また昼休憩に話を聞かせてもらうから」

背中を押されながらデスクに向かい、いつも通りに仕事を始める。

どうやら私と智紀の婚約は、スポーツ新聞の記事になっているらしい。

全然知らなかったけれど、そのお陰で一日中、会う人に祝福の言葉をかけられる始末だった。

こんなに社内でも話題になってしまったら、後に引くに引けない。

これもきっと、メディア界に精通している智紀やもしかすると、兄や父の策略かもと思うと、やっぱり素直に婚約を受け入れられないでいた。
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