はじまりは政略結婚
すると彼は珍しく、すんなりと手を離さした。

「せっかくだから、涼子に会いに行くか? 確か、撮影で来てるはずだから」

「涼子さんいるの⁉︎ うん、会いに行きたいわ」

思いがけず涼子さんの名前が出てきて、テンションが上がる。

なぜなら、兄の恋人である彼女のことは、女性しても憧れだからだ。

といっても、普段はなかなか会えないのを、残念に思っていたところだった。

「ああ。ここは控え室ばかりのフロアなんだよ。涼子の控え室は、あそこ」

智紀が指差したのは、突き当たりの部屋で、足早に向かう彼の後を小走りでついて行く。

なるほど、テレビ局の割には静かだと思ったのは、控え室ばかりの場所だったからだ。

それにしても智紀は、隣で一緒に歩いてくれる時もあれば、こうやって先を行ったりもするんだからイヤになる。

もし、どこかの部屋からタレントさんでも出てきたらどうしよう。

智紀は慣れているだろうけど、私はそういうハプニングは苦手だ。

「ちょっと待ってよ、智紀ってば」
< 55 / 360 >

この作品をシェア

pagetop