はじまりは政略結婚
「うん……」

決して本意じゃないけれど、小走りになったのは……癖だから。


白い扉の左斜め上には、小さな長方形のプレートがあって、そこに『涼子様』とパソコンの字で書かれていた。

「本当に涼子さんがいるのね……。久しぶり過ぎて、テンションが上がりそう」

ドアの前で深呼吸をする私を、智紀は呆れ顔で見ながらノックする。

「涼子、オレ」

たった二言の短いセリフに、二人の親密さが伺えて胸に引っかかった。

確か涼子さんも、智紀や兄の同級生になるんだっけ。

あまり把握をしていなかったけど、涼子さんと智紀ってけっこう仲がいいのかもしれない……。

「どうぞ」

中から聞こえたのは、紛れもなく涼子さんの声で、二人の親密ぶりを詮索する気持ちが吹き飛ぶ。

ドアを開けた智紀に連れられ部屋へ入ると、薄いピンク色の七分袖ワンピースを着た涼子さんと、そして兄が目に入ったのだった。
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