はじまりは政略結婚
肩をすくめて小さくなる私に、兄は笑って言ったのだった。

「だけど、こうやって二人で行動してるし、何より由香から婚約解消を申し出てないもんな。一緒にいれば、智紀の良さも分かってくるよ」

「やっぱり、お兄ちゃんは婚約に賛成なのね。裏切り者」

私を、パーティーに連れて行った張本人でもあるわけだし。

今度ばかりは恨み言の一つでも言いたいと思い兄を睨みつけると、困ったように眉を下げられた。

「そういう言い方をされると辛いな。由香が本当に嫌で逃げ出してきたら、オレはオヤジと智紀に、婚約解消を納得させるつもりだったんだ」

「そうなの……?」

私のことを変わらず思ってくれている兄の優しさに、ほんわかと心が温かくなる。

うっとりと兄を見つめた私を、涼子さんは嬉しそうに見ていて、智紀は苦い顔で見ているけど、今は彼のことは無視だ。

「ああ、そうだよ。だけど、少し安心した。今日は、ヘアスタイルも違ってるし。いつもは後ろで束ねてるだけなのに、髪を下ろしてるんだな?」

また誤解をされているみたいで、心の中はパニクる。

オシャレでもしたと、思われるのは心外だ。

「違うの! これは、さっき智紀がキスをしてきた時に髪をグチャグチャに……」

と言いかけて、自分がとんでもないことを口走ったと気付いて青ざめた。
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