はじまりは政略結婚
そうだったのかと思いホッとする。

兄に限って、勤務中に意味なく涼子さんに会いにくるはずがないからだ。

それなのに智紀ってば『ついて行くのか?』なんて、けっこう失礼な質問をしている。

「へぇ。打ち合わせって誰と?」

「えっ⁉︎ 誰とって……」

智紀の何気ない質問に、明らかに兄が動揺した。

もしかして、涼子さんに聞かれてはマズイ人とか……?

そう考えたらドキドキしてしまい、チラッと彼女に目を向けると、兄同様に気まずそうな顔をしている。

おまけに、私と目が合うと不自然なくらいに逸らしたのだった。

もしかして、私に聞かれるとマズイ人?

だけど、こんな場所に心当たりのある人はいない。

自分の勘違いかとも思いながら、やり取りを静かに見ていると、消え入りそうな声で兄が答えたのだった。

「里奈ちゃんだよ。本田里奈ちゃん」
< 63 / 360 >

この作品をシェア

pagetop