はじまりは政略結婚
本田里奈なんて女性は知らないから、やっぱり私とは無関係な人みたい。

それなのに、どうして兄はあんなに気まずそうにしているんだろう。

「ああ、里奈とか。あいつ今日は、スタジオの撮影だったよな? 確か、第二スタジオの」

智紀の口ぶりからは、その里奈さんて人と親密ぶりが伺える。

どうやら、タレントかモデルらしい。

智紀は、テレビ局の副社長だけでなく、芸能事務所の経営も兼任していると聞いたことがある。

だから、タレントやモデルの知り合いもかなり多いと、兄から聞かされていた。

そういうのもあって、智紀のことが苦手なのだ。

きっと里奈さんて人も、彼の事務所に所属する人なんだろう。

それなら、別に気まずいことはないと思うんだけど……。

「そうなんだよ。たぶん、そろそろ終わる頃だろうから、行こうかな。じゃあ涼子、オレ行くから」

「う、うん。また後で」

そそくさと準備をした兄は、部屋を出る間際、私の頭を優しくポンポンと叩いたのだった。

それにしても、何だか様子がおかしい……。

「相変わらずシスコンだな、あいつも。じゃあ、オレたちも行くわ。ごめんな涼子、邪魔したよ」

「ううん、全然よ。由香ちゃん、またね。お二人とも仲良く」

笑顔の涼子さんに見送られ部屋を出たけど、どこか気持ちは悶々としていたのだった。
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