はじまりは政略結婚
本当は、もっと聞きたいところだけど、タイミング悪く智紀の電話が鳴り、話が中断してしまった。

それもどうやら急用らしく、手短かに話を終えた彼は、スマホをスーツのポケットにしまうと、ため息をついている。

「ごめんな、由香。もっと一緒にいたかったんだけど、急な来客で行かないといけないんだ。帰りは遅くなるからメシはいらないし、一人で帰れるか?」

心配そうに覗き込む智紀に、思わずクスッと笑ってしまった。

「子供じゃないんだから、大丈夫よ。それに、ご飯は適当に食べて帰るから」

こういう一面は、今までの派手で軽そうなイメージとは違い、優しさが垣間見えて嬉しくなる。

「本当にごめんな。オレが連れて来ておいて……」

「ううん、気にしてないから。それより、智紀は副社長なんだから、仕事を一番に考えて。あ、それから朝ご飯ありがとう。とっても美味しかった」

笑顔を向けた瞬間、智紀はいきなり私の腕を引っ張ると、近くの鉄扉を開けた。

そこは非常階段になっていて、建物の中とはいえ、ヒンヤリとしている。

「どうしたの? 智紀」

こんな場所に連れ込んで何をするんだろうと思った瞬間、彼は唇を重ねてきたのだった。
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