ヤンキー君と異世界に行く。【完】
「その前に、この国の状況を説明しよう」
シリウスが話を戻す。
「この国は、見ての通り、砂漠に囲まれている。
これは、この国が魔法と科学を発達させてきた結果だ。
人間の豊かな生活のためと、木を切り、水を吸い上げ、大地は枯れていった」
「…………」
シリウスの声が響くたび、異世界の人間たちの顔が曇る。
「そして気づいたときには、どんな魔法をもってしても再生不可能なくらい……大地は死んでしまっていた」
仁菜も颯も、突然重たくなった雰囲気に、黙るしかなくなった。
「水も食物も、まだ植物が生きていた時代の標本から遺伝子を取り出し、同じような細胞を培養し、元素を組み合わせて作っている。
それは当初、天候にも左右されないし、死んだ大地に種を撒いたり、家畜を育てるよりずっと効率的だと思われていた。
砂だらけの空気は国を覆う魔法のフィルターで浄化され、これで問題はないと言われていた。
しかし……それから何十年もたった今、それらは失敗だったと言われている」
「失敗って……」
「……大地は私たちに、罰を与えた。
私たちは、じわじわと、追い詰められていたんだ」