Blood Tear
営業スマイルを維持する彼女は締められた喉元に手を添 え咳こむ男性に誰や?と耳打ち。
その問いに口を開くが…
「…えっと……」
向かいのコウガを数秒見つめ、思いだそうと眉間に皺を 寄せる。
「………うーんと………」
更に皺を寄せた眉間に指を添えると目を瞑った。
それから数秒後、
「……誰やっけ?」
「知らんのかい!」
思い出せないのか、ボサボサの灰色の髪をかきハニカミながら問う。
それもその筈、2人は出会ってから今の今まで互いの名を明かしていなかったのだ。
ヘラヘラとする彼の頭をどこから取り出したのか、銀のトレイでひっぱたく彼女。
そのつっこみは芸人顔負けの速さだった。
「…コウガ……コウガ・シェイング」
漫才をやっているような2人に苦笑しながらもコウガは自己紹介。
それに続き2人も名を告げる。
「俺はレオン・ブラルド」
「エレナ・ミーティアや。エレナでええよ」
レオン・ブラルド。
あちこちに跳ねた灰色の髪に黄色の鋭い瞳を持つ男性。
彼は狼の血を引く一族の1人。
オレンジの瞳に水色の髪を団子に結った女性、独りでこの店を経営する彼女はエレナ・ミーティアである。