Blood Tear


新緑で羽を休ませていた小鳥達が羽ばたいて行く。


その羽音とさえずりだけが、静かなこの部屋に響いていた。




 「さっきの話なんだが……」

 「話?」


目の前に出された陶器のカップ。

その中の茶色の液体を見つめながら唐突に呟いたのはコウガ。


彼の言葉に頬杖を付くレオンは頭に疑問符を浮かべ首を傾げる。


湯気の上る珈琲から目を離し、レオンを見つめるとコウガは言葉を続ける。




 「『大切なものを失った』そう言っていたが…」


 「あぁ…その事か……」


微かに悲しそうな表情を見せ、コウガから目を反らすと小さな窓から覗く青空をぼんやりと見つめた。


飲み物を運んで来たエレナは空気を読んだのかカウ ンターの中に姿を消す。


何かを思い出すように悲しい瞳で遠くを見つめ数秒後 、レオンはゆっくりと口を開いた。




 「……俺はあの日、家族を…仲間を…大切な物全てを 失った……」


机の上に置かれた拳は無意識に握られ、唇をグッと噛む。




 「一瞬にして奪われたんだ…あの幸せな日々を……」


そして話し出す。

思い出す事さえも辛い、彼の過去を…










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